レシーバー刻印

名古屋工廠 シリーズ28
丸を3つ組み合わせた名古屋工廠のマークとシリアルナンバー。シリーズは ク ですから
28になります。中間~後期型なのでトリガーやボルトストップ等の小物パーツが、九九式
と同様の黒染めになります。軍用銃としてはこちらの方が好ましい訳ですが、マニア的には
初期型のストローフィニッシュに憧れます。また、初期の三八式のガンブルーは、昔のコルト
拳銃を彷彿させる、青みの強い見事なブルーです。私は以前、新品同様の四四式騎兵銃
(オリジナル・フィニッシュ)を見た事がありますが、絶句するほど凄まじい出来栄えでした。

しかし、その様な初期の繊細なブルーイングは、コンディションを維持するのが大変難しく、
現在でも80%以上を残している物は僅かです。大抵は錆びてくすんだ表面の一部に僅かな
当時の面影を見るのが精一杯ですが、何故かマガジンフォロアー(ベースプレートでは無い)
とスプリングは綺麗に残っている物が多いです。もしタイムマシンがあったら、工場から出た
ばかりの初期型三八式を見てみたいと考えるのは、私だけでは無い筈。(え?オレだけか?

トリガー&トリガー・ガード

トリガーガードは削り出しのカッコイイ形状で、九九式の無愛想なプレス製とは異なります。
まあ、とは言っても軍用銃としては、九九式のプレス製の方が生産性の面で有利ですが。
何となく現代のサコーボルトアクションのトリガーガードに似てますよね・・・・・似てません?

マガジン・フロアー

トリガー・ガード内側前方にある半円型の出っ張りは、マガジン・フロアー(ベース・プレート)を
開放する為のオープナーです。内側から外(前方)に強く押すと、プレートが「ボヨーン!」と
スゴイ勢いで外れます(笑)。弾薬が入った状態で誤って押すと、全てぶっ飛んでいきます!
強い力で押さなければ簡単には作動しませんが、これはいささか問題です。(紛失とか・・)
九九式では改良されてヒンジ付きとなりました。

銃に興味の無

ダスト・カバーとセーフティ・ノブ

旧軍ライフルの特徴、遊底覆いです。
私の知るところでは、ダストカバーに初期、後期の違いは無かったと思います。セーフティ・ノブの
形状は3種類あって、初期の物は外側(外周)にも細かい横溝が彫ってあり、また、暗闇にてON
‐OFFを確認出来る様に、一部が外に出っ張っています。その後、外周の横溝が省略されます。
そして最終的にはON‐OFF確認の出っ張りが、半円の引っ込み(↑写真参照)に変化しますが、
これは切削加工を容易にする為と思われます。写真はその後期型です。

ノブを外すと、ボルトの内部にはファイアリング・ピンとメイン・スプリングしか入っておらず、恐らく
世界一シンプルな構造ではないでしょうか?そして、このセーフティはボルト開放の状態ならば、
単独で外す事が出来ます。つまりメイン・スプリングとファイアリング・ピンを交換するだけなら、
ボルトすら抜く必要が無いのです(但し、ダスト・カバー無しの状態に限ります。ダスト・カバーが
あると、ボルトは外さねばなりません)。また、セーフティがONの状態ではファイアリング・ピンを
直接ブロックしますので、トリガーやシアーを固定するタイプより信頼性が高いと言えるでしょう。


ところが、この部分のデザインを欠点とする意見もあります。当時の軍用ボルトアクションでは、
多くの物がこの場所にファイアリング・ピンと直結したコッキング・ピースがあります。ですから、
ボルト・ハンドルを操作しなくても単独でファイアリング・ピンをコック出来ます。しかし三八式に
は、それがありません。コックするには必ずボルトを操作しなければならず、それが欠点である
と言うのですが・・・この「欠点」については、個人的には無視しています。ファイアリング・ピンを
単独でコックする必要性が、軍用銃にどうしても必要とは思わないからです。「当時の弾薬は、
不発が多かった為・・・」と言うのも、どうも納得が行きません。私は当時のサープラス・アモを
使った事が何度もありますが、米国やドイツ製に関しては不発は皆無でした。まあ、数百発で
結果は語れませんが、何れにせよ不発の際は再装填が賢明と考えます。

不発の件は兎も角、コッキング・ピースを廃し、写真の様なセーフティ・ノブを装着した為、不良
弾薬などを発射して、万一高圧ガスが後ろに吹き抜けた際に、このセーフティが「防波堤」の
役割をしますので安全性は高くなります。私はむしろ、そちらの有効性の方を買いますけどね。

マズルとフロント・バンド周辺

写真では良く捉え切れませんでしたが、4条メトフォード・ライフリングの為、ボアは四角張って
います。九九式ではボアにクローム・メッキが施されますが、三八式ではメッキはされません。

サイト・プロテクターは少々貧弱な感じがします。写真の物も、既に少し曲がっています(笑)。
これは九七式狙撃銃でも起ったトラブルですが、クリーニング・ロッドの固定が甘く、射撃中に
飛び出して来る事がありました。九九式では固定が頑丈になったので、そう言ったトラブルは
ありません。

フォアエンド周辺

騎兵銃や九九式と異なり、リア・バンド(写真右のスリング環の付いたバンド)から
先のバレルは、上半分が剥き出しになります。この部分は射撃時に熱を持ちます
から、上半分だけ露出していると上下の放熱率の差によって、バレルが反れる・・・
と言う話もあるようですが・・・う~ん?競技銃レベルの話なら兎も角、軍用銃では
問題になるほどの影響では無いと思います。確かに、これより短い銃に於いては、
バレルの殆どを覆うタイプになっていますけどね。

軍用とは関係無い話ついでに、この露出部分は錆が発生し易い箇所です。熱を
持つ上に、人間が手で触る事が多いからでしょうね。現在、この部分が錆びてい
ない物を探すのは難しいですよ。写真の銃はチョイ錆程度(笑)。

い日本人でも三八式と村

後期型ピープサイト

三十年式や、初期の三八式はVノッチのオープンサイトでしたが、その後ピープサイトに変更されます。
(騎兵銃は無変更)そして、ピープサイトにも初期、後期でデザインが少々異なります。写真の銃は
中期型で、三角山?の形状をしていますが、後期型は九九式と同じピープの外側に沿った形状に
になります(写真は九九式ですが、こんな感じ)。ですから、この三角山は中期型でしか見られません。
しかし・・・三角山型の方が、丈夫で加工も量産に向いてると思うんですけどね・・・・


フォールディングサイト

何と!2400mまであります。う~ん・・・・私はこの手のサイトには割りと肯定的なんですが、
2.4キロはチトしんどい鴨。まあ、飛んでくことは飛んで行くんでしょうけどね(詳しくは銃雑記)
この最大数値ですが、三十年式から順に見て行くと結構笑えるモノがあります・・・・・

三十年式 =2000m
三八式/初=2400m
三八式/後=2200m
九九式/長=1700m
九九式/短=1500m

最初に調子に乗り過ぎて、後から恥ずかしげに少しずつ引っ込めて行った・・・って感じ?


カップタイプ

カップタイプの後期型バットプレートです。初期の物はフラットなプレートタイプです。
耐久力を向上させる意味で改良されました。ここまで御存知の方は多いと思いますが、
カップタイプにも2種類あるのは知ってましたか?良く見る一般的なのは写真の
タイプですが、もう一つは小倉で極一時期に製作された角張った形状で、やや薄い
カッププレートになっています。米国ではナロータイプと呼ばれている珍しい型です。



まだ、書きたい事は沢山あるのですが、今回はこの辺で・・・・・

田銃の名前は知っている・・・?まあ、それは言い過ぎかも
しれませんが、年輩の方なら恐らく知ってるでしょうね。世界的にも有名で、当時はトップ・クラスの
性能を有した名銃です。ロシアやメキシコ(7mmマウザー版)等にも輸出されています。今では想像
し難い!

この銃の前身は三五年式、三十年式。後継は九九式となります。デザインは御存知「南部麒次郎」
 ピストルでは今一つの南部式銃器ですが、ライフルでは真似るべき個所はキッチリ真似(マウザー)
更に経験から得た独自のアイディアを、多数盛り込んだ点が成功に結び付いたのだと思います。 

しかし欠点が無い訳ではありません。一般的に言われるのが「6.5mm弾薬の威力不足、部品に
交換性が殆ど無い、長過ぎる・・・」等ですが、当時の世界的工業レベルや主流弾薬、銃の仕様を
見ると、これらは必ずしも三八式だけの特徴では無く、マウザーやSMLEやモシン等も、元々三八式
同様長かった訳ですし、7mmや6.5mm弾薬も多くありました。部品の均一性と言う点に関しても、
当時の各国ライフルには、殆どの主要部品に合わせ番号が打ってある点から考えれば、恐らくは
何処も似たような水準だった筈です。ただ、三八式はその名の通り、明治38年(1906年)に採用
されましたので、他国に比べて若干時代に乗り遅れた感じはします。

更に一番マズかったのは(これは銃自体と直接の関係は無い話だが)、これら時代遅れの部分を
解消し切る前に、太平洋戦争に突入してしまった点です。三八式と九九式が世代交代するタイミン
グは、あまりにも遅過ぎました。まあ、逆に考えれば第一次大戦時代の銃で第二次大戦を戦い抜
いた訳ですから(負けたけど・・・)、兵士、銃、共にたいしたモンだと思います。

写真の三八式は後期型です。個人的には初期型を入手したかったのですが、最近は三八式の
出物が非常に少なくなっています。九九式は良く目にしますが、三八式はあまり見かけませんね。
まして菊紋章残存の程度の良い初期型など、「超レア・アイテム」と言っても過言ではありません。
実際、気長に探していたら、狙撃銃や二式の方が先に見つかってしまいました。